2021年07月30日

2021 年 第29週 (7月19日~7月25日)

今週の注目感染症①
☆新型コロナウイルス感染症
●新型コロナウイルス感染症とは
新型コロナウイルス感染症は、現在世界中で感染が拡大している呼吸器症状などを呈する感染症です。
日本では、2020 年 1 月 15 日に 1 例目の感染者が確認されました。
感染経路は、飛沫感染が主体と考えられますが、換気の悪い環境であれば、咳やくしゃみなどの症状がなくても感染を拡大させると考えられています(WHO は、5 分間の会話で 1 回の咳と同程度の飛沫(約 3,000 個)が飛ぶと報告)。
現在、予防接種が進められており、ワクチン未接種者と 2 回接種者を比較すると、65 歳以上の高齢者の感染が 10 分の 1 以下に抑えられていることがデータから明らかになっています。
(第 44 回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和 3 年 7 月 21 日)資料 2-4)

 ●症状
1~14 日(通常 5 日程度)の潜伏期間の後に、主に発熱、咳、倦怠感等の風邪のような症状が出現しますが、下痢、嗅覚・味覚障害などを呈する場合もあります。
初期症状に続き、肺炎症状の増悪を示す場合があります。
特に高齢者や基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、肥満など)のある方がり患すると、重症化する割合が高い傾向にあるとされており、注意が必要です。
他方、感染しても息苦しさなどを認めない比較的軽症の例や無症状の方も多くみられます。
また、いわゆる後遺症についての研究が進められており、その中間報告において「疲労感・倦怠感、息苦しさ、筋力低下、睡眠障害、思考力・集中力の低下、脱毛」が感染の診断から 6 か月後でも多く認められ、遷延する症状と考えられています。
(COVID-19 後遺障害に関する実態調査等(厚生労働省))

 ●発生状況
・全国
2021 年 7 月 29 日 0 時現在までで、国内感染者は累計で 892,293 名、国内死亡者は 15,160 名、退院または療養解除となった者は 827,372 名となっています(厚生労働省ホームページより)。
東京都を中心とする首都圏だけでなく、関西圏をはじめ多くの地域で新規感染者数が増加傾向となっています。
20~30 代が感染の中心となっていますが、東京都では 40~50 代で重症者数の増加が顕著です。
従来より感染性が強いとされるデルタ株(インドで最初に検出された変異株)の 7 月中旬時点での陽性例に占める割合は、関東地方で約 70%、関西地方で約 30%と推定され、デルタ株への置き換わりが進む中で、これまでにない急速な感染拡大状況となっています。
(参考:都道府県別の懸念される変異株の国内事例数(ゲノム解析)について(厚生労働省)

・岡山県(最新情報)
2021 年 7 月 29 日までで、岡山県の感染者は累計で 8,043 名(男性 4,013 名、女性 3,442 名、性別非公表 588 名)、死亡者は 127 名となっており、高齢者以外の年代で感染者数が増加傾向となっています。
接待を伴う飲食店、知人間の会食、学校などでクラスターが発生しています。
スクリーニング検査でL452R 変異株(デルタ株の可能性が示唆される)を検出した事例が 7 月 29 日までで 67 例となっています。
直近 1 週間(7/19~7/25)の岡山県の感染状況は、「感染者の漸増および医療提供体制への負荷が蓄積する段階」とされるステージⅡに移行しており、基本的な感染予防策(3 密の回避、マスク着用、手洗いなど)の徹底が必要です。
岡山県の状況、感染予防の方法などの詳細は、新型コロナウイルス感染症について(新型コロナウイルス感染症について(岡山県健康推進課ホームページ))をご覧ください。

今週の注目感染症②
☆RS ウイルス感染症
●RS ウイルス感染症とは
RS ウイルスによる急性呼吸器感染症です。1 歳までに半数以上、2 歳までにほぼ全てが初感染します。
感染者の咳やくしゃみ、会話の際に出るしぶきを浴びてウイルスを吸い込む飛沫感染、感染者との直接の濃厚接触や、ウイルスがついている手指や物品を触ったり、なめることによる間接的な接触で感染します。

●症状・治療
感染後 2~8 日の潜伏期間を経て、発熱、鼻汁、咳などの風邪様症状が現れます。
多くは軽症ですが、重症化すると咳がひどくなり、喘鳴や呼吸困難などが出現し、場合により細気管支炎、肺炎へと進展して
いきます。
初感染乳幼児の約 3 割で症状が重くなるとされ、乳幼児における肺炎の約 50%、細気管支炎の約 50~90%がこのウイルスによるとされています。
特に低体重出生児や心肺に基礎疾患がある場合、免疫不全がある場合などはリスクが高まります。
特効薬はなく症状に応じた対症療法を行います。

●乳幼児への感染予防
乳幼児期を過ぎると、RS ウイルスに感染しても軽症となり、感染していることに気づかずに、乳幼児にうつしてしまうことがあります。
そのため、咳などの呼吸器症状がある人は、可能な限り 0 歳児・1歳児との接触を避けることが感染拡大の防止につながります。
風邪をひいたと思ったらマスクをする、鼻をかんだ後はしっかりと手を洗う、子どもたちが使うおもちゃなどは消毒用アルコールで拭くなど、乳幼児への感染予防に努めましょう。

●発生状況
・全国
全国の 2021 年第 28 週(7/12~7/18)速報値によると、全国の定点あたり報告数は 5.99 人となり、前週(5.04 人)から増加しました。
都道府県別では、徳島県(20.22 人)、三重県(19.43 人)、和歌山県(13.17人)の順で定点あたり報告数が多くなっています。

・岡山県
2021 年第 29 週は 238 名(定点あたり 4.41 人)の報告があり、前週の 245 名(定点あたり 4.54 人)とほぼ同数でした。

地域別では、倉敷市・備中地域・備北地域での増加が顕著です。
第 29 週は、すべての地域から患者の発生報告がありました。
年齢階級別では、例年と比較すると、1 歳未満児の割合が全国と同様に減少していますが、1 歳児の割合が大きく増加しています。
全国と比較して、2 歳児以下(87%。全国は 44%)の報告がより多くなっています。

RSウイルス感染症とは(国立感染症研究所)
RSウイルス感染症Q&A(厚生労働省)

【岡山県感染症情報センターより参照】
(2021年7月30日更新)