2022年11月18日

2022 年 第45週 (11月7日~11月13日)

今週の注目感染症①
☆新型コロナウイルス感染症
 ●新型コロナウイルス感染症とは
新型コロナウイルス感染症は、世界中で感染が拡大している呼吸器症状などを呈する感染症です。
咳やくしゃみ、会話などの際に排出される、ウイルスを含んだ飛沫・エアロゾル(飛沫より更に小さな水分を含んだ状態の粒子)を吸入することで感染すると考えられます。
通常は感染者に近い距離(1m 以内)で感染しますが、エアロゾルは 1m を超えて空気中に留まりうることから、換気不十分な環境では、感染が拡大するリスクがあります。
予防接種が進められており、11 月 15 日までで全人口の 80.4%が 2 回、66.6%が 3 回のワクチン接種を完了しています。
接種は幅広い年齢を対象としており、新たに 6 か月から 4 歳までの小児の接種も開始されます。
詳細は岡山県ホームページ『新型コロナワクチンについて』を参照ください。

 ●症状
現在日本で流行の主流となっているオミクロン株は、潜伏期間が 2~3 日と、従来流行していた株(デルタ株など)と比較し短くなっています。
また、上気道で増殖しやすい特性から、従来株に比べ、鼻汁・頭痛・倦怠感・咽頭痛などの風邪様症状の頻度が増加している一方で、嗅覚・味覚障害の頻度の減少が報告されています。
しかしながら、肺炎が進展し、重症化する例も少なからず認められます。
特に高齢者や基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、肥満など)のある方がり患すると、重症化する割合が高い傾向にあるとされており、注意が必要です。
また、妊婦では妊娠後半期(21 週以降)などに重症化する割合が高いことが分かっていますが、ワクチン接種が重症化を予防する可能性があるとされています(日本における COVID-19 妊婦の現状(日本産婦人科学会、2022 年 6 月 7 日付報告))。
なお、り患後症状(いわゆる後遺症)については、こちらをご覧ください。
罹患後症状のマネジメント・第 2.0 版(2022 年 10 月 14 日発行)

 ●報告方法について
2022 年 9 月 26 日から全数把握の方法が変更されました。
全数届出対象者は 65 歳以上の者等に限定され、対象者以外は検査キット陽性者登録センター等への登録制になりました。

 ●発生状況
・全国
2022 年 11 月 16 日 0 時現在までで、国内感染者は累計で 23,426,796 名、国内死亡者は 47,826 名、また、同時点における重症者は 263 名となっています(厚生労働省ホームページより)。
全国の新規感染者数は、増加が継続しています。
重症者数および死亡者数も増加傾向です。
今夏の第 7波のような感染拡大につながる可能性があり、今後、社会経済活動の活性化による接触機会の増加や気温の低下により換気が不十分になる等の影響が注視されます。
また、季節性インフルエンザとの同時流行が懸念されます。

・岡山県(最新情報)
2022 年 11 月 17 日 0 時現在までで、岡山県の感染者は累計で 309,356 名、死亡者は 440 名(11 月 10 日~16 日までの 1 週間で 13 名増加)となっています。
高齢者施設・医療機関などでクラスターが発生しています。
直近 1 週間の新規感染者数は、全国の状況と同様に増加が継続しています。
ワクチン接種とともに、基本的な感染予防策(3 密(密閉・密集・密接)の回避、マスクの正しい着用、手洗い、換気など)の徹底に留意しましょう。
また、高齢者や基礎疾患があるなど重症化リスクの高い方や日常的にそれらの方と接する方は、混雑した場所への外出など感染リスクの高い行動を控える、体調が悪い場合には外出を控える等、日々の活動面にも留意しましょう。

今週の注目感染症②
☆後天性免疫不全症候群(エイズ AIDS)
 ●後天性免疫不全症候群(エイズ AIDS)とは
エイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することによって起こる病気ですが、HIV 感染=エイズではありません。
HIV 感染後、自覚症状のない時期(無症候期)が数年続き、さらに進行すると免疫が低下し、本来なら発症しない病気(日和見感染症)などを発症するようになります。
通常数年程度の期間を要するとされていますが、近年発症の早い症例もみられています。
免疫が低下することで発症する疾患のうち、代表的な 23 の指標となる疾患が決められており、これらを発症した時点で、エイズ発症と診断されます。
現在はさまざまな治療薬があり、きちんと服薬することでエイズ発症を防止することが可能になっています。

●感染経路、予防方法および感染の確認方法
HIV の主な感染経路は、①性行為による感染、②血液を介しての感染(覚せい剤などの依存性薬物の回し打ちによる注射器具の共用)、③母親から赤ちゃんへの母子感染、の 3 つです。
①は、不特定多数との性行為を避ける、性行為においてコンドームを使用することで予防可能です。
③は、母親が HIV 感染症の治療薬を飲むこと、帝王切開での出産、母乳を与えないことなどで赤ちゃんへの感染を 1 %以下に抑えることができます。(エイズ Q&A(エイズ予防情報ネット))
HIV に感染すると、通常 6~8 週間経過して、血液中に HIV 抗体が検出されます。
感染初期にはインフルエンザに似た症状が出ることもありますが、この症状からは HIV に感染しているかどうかを確認することはできません。
HIV 検査を受けることで、初めて感染の有無を確認することができます。

●発生状況
・全国
2021 年エイズ発生動向年報によると、HIV 感染者の新規報告数は 742 件(前年 750 件)、エイズ患者の新規報告数は 315 件(前年 345 件)であり、2020 年とほぼ同数でした。
新規 HIV 感染者と新規エイズ患者報告数の合計について、2021 年および 2020 年は 2019 年と比較して減少していますが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う検査機会の減少等の影響で検査件数等が減少しており、無症状感染者が十分に把握できていない可能性があります。
この中で新規 HIV 感染者と新規エイズ患者が継続して報告されており、注意すべき状況です。
HIV 感染者およびエイズ患者のいずれも、日本国籍男性が 80 %以上を占めています。
近年外国国籍男性の占める割合が増加傾向でしたが、2021 年は減少しました。
年代別では、HIV 感染者は 20~40 代で多くなっています。
またエイズ患者は、20 代以上の各年代に分散していますが、特に 40 代で多く、HIV 感染者よりも年代が高くなっています。
新規 HIV 感染者およびエイズ患者の感染経路は、性的接触によるものが約 80 %で、HIV 感染者の 71.6 %、エイズ患者の 51.4%が同性間性的接触と報告され、男性の同性間性的接触の多い傾向が継続しています。

なお、静注薬物使用はエイズ患者で 1 例、母子感染によるものは HIV 感染者で 1 例となっており、いずれも全体の 1%未満にとどまっています。
都道府県別でみると、2021 年 HIV 感染者報告数(人口 10 万人あたり)は、東京都(2.10)、沖縄県(1.09)、大阪府(0.93)の順で多くなっています。
また、エイズ患者報告数(人口10万人あたり)は、沖縄県(0.68)、福岡県(0.49)、岐阜県(0.46)の順で多くなっています。
岡山県は、エイズ患者報告数(人口 10 万人あたり)で全国 10 位(0.32)となっています。

・岡山県
2022 年第 45 週まで(~11/13)に報告された HIV 感染者は 1 名、エイズ患者は 3 名で、両者を合わせた新規報告数は 4 名となっています(2021 年第 45 週までの両者を合わせた新規報告数は 12 名(HIV 感染者 6名、エイズ患者 6 名))。

【岡山県内における HIV 抗体検査・相談件数】
岡山県内の保健所における相談件数は、近年は増加傾向にありましたが、2020 年に大きく減少し、2021年はさらに減少しました。
全国的にも同様に、2020 年および 2021 年は 2019 年比で大幅に減少しました。
また、岡山県内の保健所および拠点病院での HIV 検査数(人口 10 万人あたり)は、2012 年以降ほぼ横ばい状態で、2018 年以降微増の傾向も窺えましたが、2020 年に大きく減少し、2021 年にはさらに減少しました。
この傾向は全国的にも同様です。
先述のとおり新型コロナウイルス感染症の流行に伴う検査機会の減少などの影響が考えられます。

【岡山県感染症情報センターより参照】
(2022年11月18日更新)