2020年11月27日

2020 年 第 47週 (11月16日 ~ 11月22日)

今週の注目感染症①
☆新型コロナウイルス感染症
 ●新型コロナウイルス感染症とは
新型コロナウイルス感染症は、現在世界中で感染が拡大している呼吸器症状などを呈する感染症です。
日本では、2020 年 1 月 15 日に 1 例目の感染者が確認されました。
一般的な感染経路は、飛沫感染・接触感染が考えられますが、閉鎖空間で近距離で多くの人と会話するなどの一定の環境下であれば、咳やくしゃみなどの症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされています(WHO は、5 分間の会話で 1 回の咳と同程度の飛沫(約 3,000 個)が飛ぶと報告しています)。

 ●症状
1~14 日(通常 5~6 日)の潜伏期間の後に、主に発熱、咳、全身倦怠感等の風邪のような症状が出現しますが、頭痛、下痢、結膜炎、嗅覚障害、味覚障害などを呈する場合もあります。
国内の症例では、発熱や呼吸器症状が 1 週間前後持続することが多く、強い倦怠感を訴える方が多いようです。
高齢者や基礎疾患(糖尿病、心血管疾患、呼吸器疾患など)のある方がり患すると、重症化しやすいことが分かっており、注意が必要です。
他方、感染しても息苦しさなどを認めない比較的軽症の例や無症状の方も多くみられます。

 ●発生状況
・全国
2020 年 11 月 25 日 0 時現在までで、国内感染者は累計で 135,400 名、国内死亡者は 2,001 名、退院または療養解除となった者は 114,725 名となっています(厚生労働省ホームページより)。
全国では、11 月以降新規感染者数の増加傾向が強まり、過去最多の水準となっています。
特に、北海道や首都圏、関西圏、中部圏を中心に顕著な増加がみられ、全国的な感染増加につながっています。
医療提供体制における大きな支障の発生を避けるための対応が必要な段階(ステージⅢ)に入りつつある都道府県もあります。

・岡山県(最新情報)
2020 年 11 月 26 日現在までで、岡山県内では 544 名(男性 277 名、女性 227 名、性別非公表 40 名)の新型コロナウイルス感染症患者が発生しました。
なお、県内で複数のクラスターが発生しています。
岡山県の状況、感染予防の方法などの詳細は、新型コロナウイルス感染症について(新型コロナウイルス感染症について(岡山県健康推進課ホームページ)をご覧ください。


今週の注目感染症②
☆後天性免疫不全症候群(エイズ AIDS)
 ●後天性免疫不全症候群(エイズ AIDS)とは
エイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することによって起こる病気ですが、HIV 感染=エイズではありません。
HIV 感染後、自覚症状のない時期(無症候期)が数年続き、さらに進行すると免疫が低下し、本来なら発症しない病気(日和見感染症)などを発症するようになります。
通常数年程度の期間を要するとされていますが、近年発症の早い症例もみられています。
免疫が低下することで発症する疾患のうち、代表的な 23 の指標となる疾患が決められており、これらを発症した時点で、エイズ発症と診断されます。
現在はさまざまな治療薬があり、きちんと服薬することでエイズ発症を予防することが可能になっています。

 ●感染経路、予防方法および感染の確認方法
HIV の主な感染経路は、①性行為による感染、②血液を介しての感染(麻薬等の依存性薬物の回し打ちによる注射器具の共用)、③母親から赤ちゃんへの母子感染、の 3 つです。
①は、不特定多数との性行為を避ける、性行為においてコンドームを使用することで予防可能です。
③は、母親が HIV 感染症の治療薬を飲むこと、帝王切開での出産、母乳を与えないことなどで赤ちゃんへの感染を 1 %以下に抑えることができます。(エイズ Q&A(エイズ予防情報ネット))
HIV に感染すると、通常 6~8 週間経過して、血液中に HIV 抗体が検出されます。
感染初期にはインフルエンザに似た症状が出ることもありますが、この症状からは HIV に感染しているかどうかを確認することはできません。
HIV 検査を受けることで、初めて感染の有無を確認することができます。

 ●発生状況
・全国
2019 年エイズ発生動向年報によると、HIV 感染者の新規報告数は 903 名(前年 940 名)と、2007 年以降年間 1,000 名前後で推移しています。
エイズ患者の新規報告数は、333 名(前年 377 名)と、2006 年以降年間 400 名前後で推移しています。
2019 年の HIV 感染者とエイズ患者の新規報告者の合計数(1,236名)は 2018 年(1,317 名)より減少しましたが、依然として多数の報告がみられています。
HIV 感染者およびエイズ患者のいずれにおいても、日本国籍男性が 80 %以上を占めましたが、近年外国国籍男性のHIV 感染者とエイズ患者の新規報告者の合計数が増加傾向となっています。
都道府県別でみると、2019 年 HIV 感染者報告数(人口 10 万人あたり)は、東京都(2.41)、大阪府(1.20)、愛知県(0.87)の順で多くなっています。
また、エイズ患者報告数(人口 10 万人あたり)は、福岡県(0.57)、沖縄県(0.55)、東京都(0.51)の順で多くなっています。
年代別では、HIV 感染者は 20~40 代で多くなっています。
またエイズ患者は、20 歳以上の各年代に分散していますが、特に 40 代で多くなっており、HIV感染者よりも年代が高くなっています。
HIV 感染者の年代別感染経路では、男性はいずれの年齢においても同性間性的接触の割合が最も高く、年齢が上がるにつれて異性間性的接触の割合が高くなる傾向がみられます。
なお HIV 感染者、エイズ患者ともに、静注薬物使用や母子感染によるものはいずれも 1%未満にとどまっています。

・岡山県
2020 年第 47 週まで(~11/22)に報告された HIV 感染者は 7 名、エイズ患者は 5 名で、両者を合わせた新規報告数は 12 名となっています(2019 年第 47 週までの両者を合わせた新規報告数は 8 名(HIV 感染者 6 名、エイズ患者 2 名))。

【岡山県内における HIV 抗体検査・相談件数】
岡山県内の保健所等における相談件数は、2011 年をピークに減少し、2012 年以降ほぼ横ばいで推移していましたが、近年は増加傾向にあります。
また保健所および拠点病院での HIV 検査数(人口 10 万人あたり)は、2010 年以降ほぼ横ばい状態であり、全国の保健所等での HIV 検査数(人口 10 万人あたり)と比較して少なくなっています。

【岡山県感染症情報センターより参照】
(2020年11月27日更新)