2021年11月19日

2021 年 第45 週 (11月8日~11月14日)

今週の注目感染症①
☆新型コロナウイルス感染症
●新型コロナウイルス感染症とは
新型コロナウイルス感染症は、現在世界中で感染が拡大している呼吸器症状などを呈する感染症です。
咳やくしゃみ、会話などの際に排出される、ウイルスを含んだ飛沫・エアロゾル(飛沫より更に小さな水分を含んだ状態の粒子)を吸入することで感染すると考えられます。
通常は感染者に近い距離(1m 以内)で感染しますが、エアロゾルは 1m を超えて空気中に留まりうることから、換気不十分な環境では、感染が拡大するリスクがあります。
現在、進められている予防接種(11 月 17 日までに全人口の 75.6%が 2 回のワクチン接種を完了)については、12 月 1 日から追加(3 回目)の接種が始まります (新型コロナワクチンについて(首相官邸ホームページ)

 ●症状
1~14 日(通常 5 日程度)の潜伏期間の後に、主に発熱、咳、倦怠感等の風邪のような症状が出現しますが、下痢、嗅覚・味覚障害などを呈する場合もあります。
初期症状に続き、肺炎症状の増悪を示す場合があります。
特に高齢者や基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、肥満など)のある方がり患すると、重症化する割合が高い傾向にあるとされており、注意が必要です。
他方、感染しても息苦しさなどを認めない比較的軽症の例や無症状の方も多くみられます。
また、いわゆる後遺症についての研究が進められており、その中間報告において「疲労感・倦怠感、息苦しさ、筋力低下、睡眠障害、思考力・集中力の低下、脱毛」が感染の診断から 6 か月後でも多く認められ、遷延する症状と考えられています(COVID-19 後遺障害に関する実態調査等(厚生労働省))

 ●発生状況
・全国
2021 年 11 月 18 日 0 時現在までで、国内感染者は累計で 1,725,901 名、国内死亡者は 18,336 名、入院治療等を要する者は 1,597 名(うち重症者 76 名)となっています(厚生労働省ホームページより)。
全国の新規感染者数は、昨年の夏以降で最も低い水準が継続しており、重症者数および死亡者数も減少が続いています。
新規感染者数の年代別割合では、60 代以上が 2 割弱まで上昇する一方、10 代以下が 2割程度で横ばいが続いています。
今後の気温の低下による屋内での活動の増加や、忘年会など年末に向けての行事により、さらなる社会経済活動の活発化が想定され、新規感染者数の増加が懸念されます。
引き続き必要な対策の徹底と、新規感染者数の動向に注視が必要です。

・岡山県(最新情報)
2021 年 11 月 18 日までで、岡山県の感染者は累計で 15,494 名(男性 7,643 名、女性 6,306 名、性別非公表 1,545 名)、死亡者は 136 名となっています。
岡山県においては、低い水準で推移していますが、70 代以上の高齢者で増加傾向となっています。
感染拡大の防止が重要であり、基本的な感染予防策(3密の回避、マスクの正しい着用、手洗い、換気など)の徹底に留意が必要です。
引き続き、感染者数の動向に注意しましょう。

今週の注目感染症②
☆後天性免疫不全症候群(エイズ AIDS)
●後天性免疫不全症候群(エイズ AIDS)とは
エイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することによって起こる病気ですが、HIV 感染=エイズではありません。
HIV 感染後、自覚症状のない時期(無症候期)が数年続き、さらに進行すると免疫が低下し、本来なら発症しない病気(日和見感染症)などを発症するようになります。
通常数年程度の期間を要するとされていますが、近年発症の早い症例もみられています。
免疫が低下することで発症する疾患のうち、代表的な 23 の指標となる疾患が決められており、これらを発症した時点で、エイズ発症と診断されます。
現在はさまざまな治療薬があり、きちんと服薬することでエイズ発症を防止することが可能になっています。

●感染経路、予防方法および感染の確認方法
HIV の主な感染経路は、①性行為による感染、②血液を介しての感染(覚せい剤などの依存性薬物の回し打ちによる注射器具の共用)、③母親から赤ちゃんへの母子感染、の 3 つです。
①は、不特定多数との性行為を避ける、性行為においてコンドームを使用することで予防可能です。
③は、母親が HIV 感染症の治療薬を飲むこと、帝王切開での出産、母乳を与えないことなどで赤ちゃんへの感染を 1 %以下に抑えることができます。
エイズ Q & A(エイズ予防情報ネット )
>>詳細はこちら
HIV に感染すると、通常 6~8 週間経過して、血液中に HIV 抗体が検出されます。
感染初期にはインフルエンザに似た症状が出ることもありますが、この症状からは HIV に感染しているかどうかを確認することはできません。
HIV 検査を受けることで、初めて感染の有無を確認することができます。

●発生状況
・全国
2020 年エイズ発生動向年報によると、HIV 感染者の新規報告数は 750 件(前年 903 件)と、前年から大きく減少した一方で、エイズ患者の新規報告数は 345 件(前年 333 件)と、2016 年以来 4 年ぶりに増加しました。
エイズ患者の増加については、CD4 値が低い HIV 感染者における、新型コロナウイルス感染症流行による受診機会の遅れを一部反映している可能性があるとされています 。
IASR HIV/AIDS 2020 年(国立感染症研究所)
>>詳細はこちら
HIV 感染者およびエイズ患者のいずれも、日本国籍男性が 80 %以上を占めましたが、近年外国国籍男性の HIV 感染者とエイズ患者の新規報告者の合計数が増加傾向となっています。
年代別では、HIV 感染者は 20~40 代で多くなっています。
またエイズ患者は、20 代以上の各年代に分散していますが、特に 40 代で多く、HIV 感染者よりも年代が高くなっています。
新規 HIV 感染者およびエイズ患者の感染経路は、性的接触によるものが 80 %以上で、HIV 感染者の 72.4 %、エイズ患者の 55.1 %が同性間性的接触と報告され、男性の同性間性的接触の多い傾向が継続しています。
なお、静注薬物使用は HIV 感染者で 5 例、エイズ患者で 3 例、母子感染によるものは HIV 感染者で 1 例となっており、いずれも全体の 1%未満にとどまっています。
都道府県別でみると、2020 年 HIV 感染者報告数(人口 10 万人あたり)は、東京都(2.18)、大阪府(1.01)、沖縄県(0.89)の順で多くなっています。
また、エイズ患者報告数(人口10万人あたり)は、大分県(0.70)、沖縄県(0.69)、東京都(0.57)の順で多くなっています。
岡山県は、エイズ患者報告数(人口 10 万人あたり)で全国 5 位(0.42)となっています。

・岡山県
2021 年第 45 週まで(~11/14)に報告された HIV 感染者は 5 名、エイズ患者は 5 名で、両者を合わせた新規報告数は 10 名となっています(2020 年第 45 週までの両者を合わせた新規報告数は 11 名(HIV 感染者7 名、エイズ患者 4 名))。

【岡山県内における HIV 抗体検査・相談件数】
岡山県内の保健所における相談件数は、2011 年をピークに減少し、近年は増加傾向にありましたが、2020 年は大きく減少しました。
全国的にも相談件数の減少は顕著で、2020 年は前年の半数近くまで減少しました。
また保健所および拠点病院での HIV 検査数(人口 10 万人あたり)は、2011 年以降ほぼ横ばい状態でしたが、2020 年は岡山県、全国とも大きく減少しました。
新型コロナウイルス感染症の流行により、人々の受療行動の抑制の影響や、検査機会の減少などの影響が考えられ、無症状感染者が十分に診断されていない可能性に留意する必要があります。

【岡山県感染症情報センターより参照】
(2021年11月19日更新)